亡くなって初めての正月|仏壇のお供えと飾り、過ごし方
- h-gyoten
- 6 日前
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近しい方を亡くされてから初めて迎えるお正月。
世の中がお祝いムードに包まれる中で、「仏壇には何を供えればいいの?」「正月飾りはしてもいいの?」と、戸惑いや不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
故人を偲び、心静かに新年を迎えるために知っておきたい、喪中の正月の過ごし方や仏壇の作法。
この記事では、お供え物の選び方から飾り付けのルール、年始の挨拶マナーまで、あなたが抱える疑問に一つひとつ丁寧にお答えします。
正しい知識を身につけて、故人への想いと共に穏やかな新年をお迎えください。
喪中の正月の基本的な考え方
まず、亡くなって初めての正月を迎えるにあたっての基本的な心構えを理解しておきましょう。
大切なのは、故人を偲び、静かに過ごすことです。
故人を偲び静かに新年を迎える
喪中の正月は、お祝い事を避け、故人を偲びながら静かに過ごすのが基本です。
世間一般の華やかなお正月とは異なり、故人との思い出を振り返り、冥福を祈る大切な時間と捉えましょう。
派手な飾り付けや宴会は控え、家族で穏やかに故人のことを語り合うなど、心静かな新年を迎えることを心がけてください。
「忌中」と「喪中」の違いと期間
「忌中」と「喪中」は混同されがちですが、意味合いと期間が異なります。
忌中(きちゅう)
故人が亡くなってから四十九日法要(神道では五十日祭)までの期間を指します。この期間は、死の穢(けが)れがまだ残っているとされ、特に身を慎むべき時期です。神社の鳥居をくぐることも避けるのが一般的です。
喪中(もちゅう)
故人の死を悼み、身を慎む期間のことで、一般的に一周忌(亡くなってから1年)までを指します。忌中も喪中に含まれます。
喪中の期間は、故人との関係性によって異なりますが、一般的には配偶者や1親等(親、子)で12〜13ヶ月、2親等(兄弟姉妹、祖父母、孫)で3〜6ヶ月とされています。
四十九日(忌明け)前後の過ごし方の違い
故人が亡くなってから四十九日(忌明け)を迎えているかどうかで、過ごし方に少し違いがあります。
四十九日(忌明け)前にお正月を迎える場合
「忌中」にあたるため、より一層身を慎む必要があります。おせち料理の準備や初詣などは厳に慎むべきとされています。
四十九日(忌明け)後にお正月を迎える場合
「喪中」ではありますが「忌中」は明けているため、少しずつ日常に戻っていく時期です。ただし、お祝い事である正月の行事は引き続き控えるのがマナーです。
仏壇へのお供え物で推奨されるもの
喪中の正月、仏壇には何を供えればよいのでしょうか。
お祝いの意味合いを持つものは避け、故人を偲ぶ気持ちが伝わるものを選びましょう。
故人の好物や普段通りのご飯(お仏飯)
一番のお供えは、故人が生前好きだった食べ物や飲み物です。
お菓子や果物、好きだった料理などを供えて、在りし日の姿を偲びましょう。
また、炊き立てのご飯(お仏飯)やお茶、お水は普段通りにお供えします。
白いお餅(重ねない、飾り付けなし)
お正月にお餅をお供えしたい場合は、紅白ではなく白いお餅を選びましょう。
鏡餅のように重ねたり、橙(だいだい)や裏白などの飾り付けをしたりせず、お皿にそのまま乗せてお供えするのが一般的です。
季節の果物(りんご、みかん、いちご)
旬の果物もお供えに適しています。
りんごやみかん、いちごなど、季節を感じられるものを選びましょう。
故人が好きだった果物があれば、ぜひお供えしてあげてください。
お供え用のお菓子(日持ちするもの)
お菓子をお供えする場合は、故人が好きだったものや、日持ちのする焼き菓子、おせんべいなどがよいでしょう。
お正月の時期は人の集まる機会も増えるため、個包装になっているものが分けやすく便利です。
白や淡い色の花(菊、百合、胡蝶蘭)
仏壇に飾る花は、白や黄色、紫といった落ち着いた色合いのものを選びます。
菊や百合、胡蝶蘭、トルコギキョウなどが一般的です。
トゲのある花や香りの強すぎる花は避けるのがマナーとされています。
喪中の正月に避けるべきお供え物
反対に、喪中の正月にはふさわしくないとされるお供え物もあります。
お祝い事を連想させるものは避けましょう。
鏡餅や紅白の餅
鏡餅は年神様へのお供え物であり、お祝いの意味合いが強いものです。
そのため、喪中の期間は仏壇にも神棚にもお供えしません。
紅白の餅も同様に、おめでたい色合いであるため避けるのがマナーです。
鯛や海老などの縁起が良いとされる魚介類
「めでたい」に通じる鯛や、腰が曲がっている姿から長寿を連想させる海老など、お祝いの席で使われる縁起の良い魚介類は、喪中のお供え物にはふさわしくありません。
昆布や数の子などの祝い肴
おせち料理に使われる「祝い肴」も避けましょう。
「よろこぶ」に通じる昆布や、子孫繁栄を願う数の子などは、お祝いの意味合いが強いためお供えには不向きです。
お屠蘇や祝い酒
お屠蘇(おとそ)は、一年の邪気を払い長寿を願って飲むお祝いの酒です。
そのため、喪中の期間は飲用を控えるとともに、お供えもしません。
お酒をお供えしたい場合は、故人が好きだった銘柄などを「御仏前」としてお供えするのがよいでしょう。
仏壇周りや家の正月飾りは控える
喪中の期間は、お正月飾りも控えるのが一般的です。
仏壇周りも華美な装飾はせず、普段通りか、少し丁寧に整える程度に留めましょう。
しめ縄・門松・鏡餅は飾らない
しめ縄や門松、鏡餅といった正月飾りは、新しい年の神様(年神様)をお迎えするためのものです。
喪中の家庭では、これらのお祝いの飾り付けは一切行いません。
玄関や神棚、車などに飾るのも控えましょう。
仏壇への特別な正月飾りも不要
仏壇に対しても、松や千両、裏白といった正月らしい飾り付けは不要です。
普段通りのお花やお供え物をし、静かに手を合わせることが何よりの供養になります。
仏壇は年末に丁寧に掃除し清潔に保つ
正月飾りはしませんが、新年を気持ちよく迎えるために、年末には仏壇や仏具を丁寧に掃除しましょう。
毛先の柔らかいハタキでホコリを払い、乾いた布で優しく拭き上げます。
仏具もきれいに磨き、清潔な状態を保つことが大切です。
喪中の正月の過ごし方とマナー
仏壇のことだけでなく、喪中の正月の社会的な振る舞いや過ごし方にも配慮が必要です。
周囲への気遣いを忘れず、穏やかに過ごしましょう。
年始の挨拶「おめでとう」は使わない
喪中の場合、新年の挨拶で「おめでとうございます」という言葉は使いません。
代わりに「昨年はお世話になりました」「本年もよろしくお願いいたします」といった挨拶を交わします。相手から「おめでとう」と言われた場合も、「ありがとうございます。本年もよろしくお願いします」と返せば問題ありません。
年賀状は出さず喪中はがきを送る
喪中の年は、年賀状のやり取りを控えます。
その代わりに、11月中旬から12月初旬頃までに「喪中はがき(年賀欠礼状)」を送るのがマナーです。
これは、「喪中のため新年のご挨拶を失礼します」ということを事前にお知らせするためのものです。
初詣は松の内を避けるか控える
神社への初詣は、お祝い事にあたるため、喪中の期間は控えるのが一般的です。
特に、神道の考え方では死を「穢れ」とするため、忌中(五十日祭まで)の神社参拝は避けるべきとされています。
どうしてもお参りしたい場合は、忌明け後、かつ正月飾りを飾る期間である「松の内」(一般的に1月7日まで)を過ぎてから、お祝いではなく故人を偲び、新年の平穏を祈る気持ちで参拝するのがよいでしょう。
お寺への初詣(初詣り)は問題ないとされることが多いですが、気になる場合はお寺に確認してみてください。
おせち料理は祝い肴を避ければ問題ない
おせち料理は本来お祝いの食事ですが、最近では家族で集まるための食事という意味合いも強くなっています。紅白のかまぼこや黒豆、数の子、昆布巻きといった祝い肴を避け、煮物など普段の食事に近いものを用意するのであれば、食べても問題ないとする考え方が増えています。
親族や弔問客への対応方法
年末年始に親族や故人の友人が弔問に訪れることもあるでしょう。
その際は、正月飾りやお祝いの料理がないことを事前に伝えておくと、お互いに気まずい思いをしなくて済みます。
故人の思い出話をしながら、静かにお茶を飲むといった過ごし方が望ましいです。
喪中の正月のよくある質問(Q&A)
ここでは、喪中の正月に関して多くの方が疑問に思う点をQ&A形式で解説します。
Q.神棚はどうすればいい?神棚封じとは
A. 神棚には「神棚封じ」を行い、お参りを控えます。
神道では死を「穢れ」と捉えるため、忌中(五十日祭まで)の期間は神様との接触を避けるために神棚を封じます。
神棚封じの方法は、神棚の正面に白い半紙を貼り、お供えや拝礼を中断します。
この間は、しめ縄や榊(さかき)なども新しいものに交換しません。
忌明け(五十日祭)を迎えたら、半紙を剥がして普段通りのお参りを再開します。
Q.浄土真宗など宗派による違いはある?
A. 浄土真宗では、喪中という考え方がありません。
浄土真宗には、死を「穢れ」とする考え方や、「喪に服す」という概念がありません。
亡くなった方はすぐに阿弥陀如来の力によって極楽浄土へ往生すると考えられているためです。
そのため、浄土真宗では年賀状を出したり、正月飾りをしたりすることも問題ないとされています。ただし、ご家族や親族の心情に配慮し、世間一般のマナーに合わせて静かに過ごす家庭が多いのが実情です。
不安な場合は、菩提寺に相談してみるとよいでしょう。
Q.お供え物の「のし」の表書きと水引
A. 表書きは「御供」または「御仏前」、水引は黒白か双銀の結び切りを選びます。
親戚などからお供え物をいただいたり、逆に持参したりする場合の「のし」のマナーです。
表書き
四十九日を過ぎていれば「御仏前」、四十九日前であれば「御霊前」と書くのが一般的ですが、迷った場合はどちらの時期でも使える「御供」とするとよいでしょう。
水引
黒白または双銀の結び切りを使用します。
関西など一部地域では黄白の水引が使われることもあります。
Q.お線香は特別なものが必要?
A. 特別なものは必要ありません。普段使っているお線香で大丈夫です。
喪中の正月だからといって、特別なお線香を用意する必要はありません。
普段通りのお線香をお供えし、心を込めて手を合わせましょう。
もし来客用に少し良い香りのものを用意したいということであれば、白檀(びゃくだん)や沈香(じんこう)といった落ち着いた香りのものがおすすめです。
Q.子どもへのお年玉はあげてもいい?
A. 「お年玉」という名目を避け、「書籍代」や「おこづかい」として渡しましょう。
お年玉は新年のお祝いなので、喪中の期間は控えるのがマナーです。
しかし、子どもたちにとっては楽しみにしているイベントでもあります。
その場合は、お年玉袋ではなく無地のポチ袋などに入れ、表書きを「書籍代」「文具代」「おこづかい」などとして渡すとよいでしょう。
まとめ
故人を亡くして初めて迎えるお正月は、寂しさや戸惑いを感じることが多いかもしれません。
しかし、大切なのは故人を偲び、感謝の気持ちを伝えることです。
基本的な考え方
お祝い事は避け、故人を偲び静かに過ごす。
仏壇のお供え
故人の好物や白い餅、季節の果物などを供え、鏡餅や縁起物は避ける。
飾り付け
しめ縄や門松などの正月飾りはせず、仏壇も普段通りか丁寧に掃除する程度に。
過ごし方
年始の挨拶は「おめでとう」を避け、年賀状の代わりに喪中はがきを出す。
この記事でご紹介した作法やマナーは、あくまで一般的なものです。
最も重要なのは、ご家族が故人を想い、心穏やかに新年を迎えることです。
地域の慣習やご家庭の状況に合わせて、できる範囲で丁寧に行いましょう。
あなたの心が少しでも安らぎ、故人への想いと共に穏やかな新年を迎えられることを心よりお祈り申し上げます。
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