仏壇のお膳の配置を図解で解説!宗派別の違いや向きも紹介
- h-gyoten
- 5 日前
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親から仏壇を引き継いだり、新たにお迎えしたりした際に、「お膳のお供えってどうすればいいの?」と戸惑うことはありませんか。
特に、お盆やお彼岸、法事といった大切な行事を前にすると、ご先祖様に失礼のないように、正しい作法を知っておきたいと考えるのは自然なことです。
この記事では、初めて仏壇のお世話をする方でも安心して準備ができるよう、お膳の基本的な配置から、宗派による違い、お供えする料理の基本まで、図解を交えながら分かりやすく解説します。
この記事を読めば、仏壇のお膳に関するあらゆる疑問が解決し、自信を持ってご先祖様の供養ができるようになります。
【図解】霊供膳の基本的な配置と器に盛る料理
仏壇にお供えするお膳は、器の配置に決まりがあります。
霊供膳は、親椀(ご飯)、汁椀、平椀(煮物)、壺椀(和え物)、高坏(香の物)の5つの器で構成され、それぞれ配置が決まっています。
ここでは、基本的な配置を真上から見た図のイメージで解説します。

霊供膳(りょうぐぜん)・お仏膳とは
霊供膳(りょうぐぜん)とは、ご先祖様や故人の霊にお供えするために用意する、特別な食事のことを指します。
宗派や地域によっては「お仏膳(おぶつぜん)」とも呼ばれます。
仏教では、亡くなった方は食べ物の「香り」を召し上がると考えられており、感謝と供養の気持ちを込めてお供えします。
親椀(ご飯)の配置
配置場所
左手前
内容
炊き立てのご飯を盛ります。ご先祖様への感謝を示すため、お箸でつまんで形を整え、山盛りにするのが一般的です。
汁椀(お吸い物・味噌汁)の配置
配置場所
右手前
内容
お吸い物や味噌汁を入れます。具材には、豆腐やわかめ、季節の野菜などを使います。
平椀(煮物)と壺椀(和え物)の配置
平椀(ひらわん)
配置場所
右奥
内容
季節の野菜や高野豆腐、こんにゃくなどを使った煮物を盛ります。献立の主菜となるおかずです。
壺椀(つぼわん)
配置場所
左奥
内容
おひたしや酢の物、和え物などを盛ります。
高坏(たかつき)の配置
配置場所
中央
内容
「こうはい」とも読み、お漬物などの香の物を2〜3切れ盛ります。一般的にはたくあんなどが用いられます。
箸を置く位置と向き
お膳の一番手前、親椀と汁椀の間に置きます。
このとき、箸先をご本尊やご先祖様(仏壇の奥)側に向けて置くのが正しい作法です。
これは、ご先祖様が召し上がるためのお膳であることを示しています。
仏壇へのお膳の置き方・位置と向き
お膳の器の並べ方がわかったら、次は仏壇のどこに、どの向きで置くのかを確認しましょう。
お膳は仏壇の中段に、箸を仏壇側に向けて置くのが基本です。
お膳を置く場所は仏壇の中段が基本
仏壇の内部は、一般的に三段構造になっています。
上段
ご本尊(仏像や掛け軸)を祀る最も神聖な場所です。
中段
ご先祖様の位牌を安置し、お茶やお水、お供え物などを置く場所です。
霊供膳は、この中段の位牌の前にお供えします。
下段
花立や香炉、燭台(ろうそく立て)などの仏具を置く場所です。
仏壇のスペースが狭く中段に置けない場合は、仏壇の前に「経机(きょうづくえ)」や小さな台を置き、その上にお供えしても問題ありません。
お膳の向きは箸を仏壇側に向ける
前述の通り、お膳はご先祖様に召し上がっていただくためのものです。
そのため、お膳の向きは、ご飯が左、汁物が右になるようにして、箸先を仏壇の奥(ご本尊・位牌側)に向けてお供えします。
自分たちがお膳をいただく時とは逆の向きになるので、間違えないように注意しましょう。
お膳がない場合の仏具の配置
必ずしも専用の霊供膳セットが必要なわけではありません。
もしお膳がない場合は、ご家庭にある小皿や小鉢で代用することも可能です。
その場合も、ご飯と汁物を手前に、おかずを奥に配置するという基本は変わりません。
大切なのは、心を込めてお供えすることです。
主要宗派別のお膳の配置・作法の違い
霊供膳の基本的な配置は多くの宗派で共通していますが、一部の宗派では考え方や作法が異なります。
宗派によってお膳の考え方や配置が異なり、特に浄土真宗ではお供えしないのが特徴です。
ご自身の家の宗派がわからない場合は、親族に確認しておくと安心です。
浄土真宗はお膳をお供えしないのが一般的
浄土真宗では、「亡くなった方は阿弥陀如来の力によってすぐに極楽浄土で仏になる(往生即成仏)」という教えがあります。
そのため、故人の霊がこの世に帰ってくるという考えがなく、霊供膳をお供えする習慣がありません。
ただし、仏様への感謝を示すために、ご飯だけを「仏飯器(ぶっぱんき)」に盛ってお供えします。
浄土宗・天台宗の配置
浄土宗や天台宗では、この記事で紹介した基本的な霊供膳の配置でお供えします。
特別な決まりはなく、一般的な作法に則って問題ありません。
真言宗の配置
真言宗も、基本的な配置でお供えします。
ただし、霊供膳とは別に、仏飯器(ご飯)と茶湯器(お茶)を一対にしてお供えすることがあります。
曹洞宗・臨済宗の配置
禅宗である曹洞宗や臨済宗でも、基本的な配置でお供えします。
特に曹洞宗では、食事の作法を修行の一環として非常に大切にしており、霊供膳の並べ方についても丁寧な教えがあります。
日蓮宗の配置(おりく膳)
日蓮宗でも、基本的な配置でお供えします。
日蓮宗では霊供膳のことを「おりく膳」と呼ぶこともあります。
配置の仕方に大きな違いはありません。
お供えする精進料理の基本と献立
霊供膳にお供えするのは、仏教の教えに基づいた「精進料理」です。
お供えする料理は、肉や魚を使わない精進料理が基本で、一汁三菜が一般的です。
一汁三菜が基本の献立
精進料理の献立は、日本の伝統的な食事形式である「一汁三菜(いちじゅうさんさい)」が基本です。
飯
親椀に盛るご飯
汁
汁椀に盛る汁物
菜(三菜)
平椀(煮物)、壺椀(和え物)、高坏(香の物)の3種類のおかず
この基本を守れば、難しく考える必要はありません。
旬の野菜などを使って、心を込めて作りましょう。
避けるべき食材(肉・魚・五辛)
精進料理では、殺生を避けるという仏教の教えから、使ってはいけない食材があります。
肉・魚介類
動物性の食材は一切使用しません。だしを取る際も、鰹節や煮干しではなく、昆布やしいたけを使いましょう。
五辛(ごしん)
五辛とは、ネギ、ニラ、ニンニク、ラッキョウ、アサツキ(またはタマネギ)といった香りの強い野菜のことです。これらは煩悩を刺激するとされ、避けるのが一般的です。
市販品やフリーズドライの活用
「毎日精進料理を作るのは大変…」と感じる方も多いでしょう。
無理なく続けることが供養において最も大切です。
最近では、スーパーで手軽に買えるお惣菜や、お湯で戻すだけで完成するフリーズドライの精進料理セットなども販売されています。
こうした便利なものを上手に活用するのも良い方法です。
時期・行事別のお供えの作法
お膳をお供えする頻度や内容は、日常と特別な行事とで異なります。
日常はご飯とお茶が基本ですが、お盆やお彼岸などの特別な日には霊供膳をお供えします。
日常のお供え(仏飯・茶湯)

毎日霊供膳をお供えするのは大変です。
普段は、炊き立てのご飯を「仏飯(ぶっぱん)」、お茶やお水を「茶湯(ちゃとう)」としてお供えするのが一般的です。
朝一番にお供えし、午前中のうちに下げましょう。
お盆のお供え
お盆はご先祖様が家に帰ってくるとされる大切な期間です。
お盆の期間中(8月13日〜16日頃)は、毎日霊供膳をお供えするのが最も丁寧な供養とされています。
難しい場合でも、迎え火を焚く13日の夕食から、送り火を焚く16日の朝食まではお供えできると良いでしょう。
お彼岸のお供え

お彼岸は、春と秋の年2回、ご先祖様に感謝を伝える期間です。
お彼岸の期間中、特に「彼岸の入り」「中日(ちゅうにち)」「彼岸の明け」には霊供膳をお供えするのが一般的です。
また、お彼岸のお供え物として「ぼたもち」や「おはぎ」も欠かせません。

法事・命日のお供え
四十九日や一周忌などの法事や、故人の月命日には、霊供膳をお供えして丁寧に供養します。
故人が生前好きだった食べ物を、精進料理の範囲でアレンジして加えると、より心のこもったお供えになります。
仏壇のお供えに関するよくある質問
最後に、仏壇のお供えに関して多くの方が抱く疑問にお答えします。
お供えは長時間置かず、感謝していただくのが基本です。
お菓子や果物も心を込めてお供えしましょう。
お供えはいつ下げる?
「お供えしたお膳はいつ下げればいいの?」という疑問は非常に多いです。
霊供膳は、ご先祖様が食事を終える時間、だいたい30分〜1時間程度で下げるのが目安です。
長時間置いたままにすると、特に夏場は食事が傷んでしまうため衛生的によくありません。
お線香を1本焚き、その火が消える頃を目安にするのも良いでしょう。
お供えした料理は食べてもいい?
「お供えした料理は食べてもいいのでしょうか?」
はい、ぜひ召し上がってください。
仏様やご先祖様にお供えしたものをいただくことを「お下がり」と言います。
お下がりをいただくことで、仏様からのご加護を受け、ご先祖様との繋がりを感じることができると考えられています。
感謝の気持ちを込めて、家族で分け合っていただくのが良い供養になります。
お菓子や果物のお供えの置き方と向き
お菓子や果物は、「高坏(たかつき)」という足付きの器に乗せてお供えするのが正式です。
置き場所は、お膳と同じく仏壇の中段が基本です。
向きについては諸説ありますが、お菓子ならパッケージの正面をこちら側(拝む側)に向ける、果物ならヘタをこちらに向けないなど、お供えする側が見て美しい状態を意識すると良いでしょう。
何よりも、心を込めてお供えする気持ちが大切です。
毎日お供えできない場合はどうする?
仕事や家庭の事情で、毎日丁寧にお供えするのが難しい場合もあるでしょう。
大切なのは、無理なく続けることです。
もし毎日が難しい場合は、「週末だけ」「月命日と週末だけ」というように、ご自身の生活スタイルに合わせてルールを決めても構いません。
できる範囲で、ご先祖様への感謝の気持ちを形にすることが供養の本質です。
まとめ
仏壇へのお膳の配置や作法について解説しました。
最後に、この記事の重要なポイントを振り返ります。
霊供膳の基本配置
ご飯(左手前)、汁物(右手前)、煮物(右奥)、和え物(左奥)、香の物(中央)の5つの器を正しく並べます。
お膳の置き方と向き
仏壇の中段に、箸先を仏壇の奥(ご先祖様側)に向けて置きます。
宗派による違い
多くの宗派で配置は共通ですが、浄土真宗では霊供膳をお供えしないのが大きな特徴です。
料理は精進料理が基本
肉・魚・五辛を避けた「一汁三菜」の精進料理をお供えします。市販品などを活用しても問題ありません。
一番大切なのは感謝の気持ち
作法や決まり事も大切ですが、何よりもご先祖様を敬い、感謝する気持ちを込めてお供えすることが最も重要です。
最初は難しく感じるかもしれませんが、何度か行ううちに自然と身についていきます。
この記事を参考に、自信を持ってご先祖様の供養を行ってください。
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