仏壇の飾り方|宗派別の違いと仏具の正しい配置
- h-gyoten
- 6 時間前
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「新しく仏壇を購入したけれど、仏具の飾り方が分からない」
「親から引き継いだけれど、うちの宗派の正しい配置はこれで合っているのだろうか?」
ご先祖様や故人を偲び、感謝を伝える大切な場所である仏壇。
しかし、その飾り方には基本的なルールや宗派ごとの違いがあり、戸惑ってしまう方も少なくありません。
特に、法事やお盆など、人が集まる機会にはきちんとしておきたいものですよね。
この記事では、基本的な仏具の飾り方から、浄土真宗をはじめとする宗派ごとの違い、さらにはミニ仏壇の飾り方やお供えの作法まで、分かりやすく解説します。
この記事を読めば、あなたの家の仏壇の正しい飾り方が分かり、心穏やかにお参りできるようになるでしょう。
仏壇の基本的な飾り方と仏具の配置
仏壇の内部は、ご本尊様がいらっしゃる清浄な世界を表現したものです。
そのため、仏具の配置には基本的なルールがあります。
まずは宗派を問わない一般的な飾り方として、仏壇の段ごとの配置を見ていきましょう。

最上段:ご本尊と脇侍の配置
仏壇の中で最も神聖な場所が、一番上の段である「須弥壇(しゅみだん)」です。
最上段の中央には、信仰の中心である「ご本尊」を安置します。
ご本尊は宗派によって異なり、阿弥陀如来や釈迦如来などの仏像や、名号が書かれた掛軸などがあります。
そして、ご本尊の両脇には、宗派の開祖や教えを広めた高僧などを祀る「脇侍(きょうじ・わきじ)」を配置します。
ご本尊と脇侍は、三尊一組としてお祀りするのが基本です。
中央
ご本尊(仏像または掛軸)
向かって右
脇侍(掛軸)
向かって左
脇侍(掛軸)
ご本尊の下段:位牌の配置
位牌は、故人の魂が宿る依り代(よりしろ)とされ、ご本尊の一段下の段に安置します。
これは、ご本尊様に見守っていただくという意味合いがあります。
ご本尊様が隠れてしまわないように、少し脇にずらして置くのが一般的です。
複数の位牌がある場合は、右側を上座として古いご先祖様から順に並べます。
中段:仏飯器と茶湯器の配置
中段には、仏様やご先祖様への感謝を表すお供えを置きます。
仏飯器(ぶっぱんき)
炊きたてのご飯を丸く盛ってお供えする器です。
茶湯器(ちゃとうき)
お茶やお水をお供えする器です。
これらを位牌の前、またはご本尊の前に置きます。
一対で置く場合は、向かって右に茶湯器、左に仏飯器を置くのが一般的です。
下段:三具足・五具足の配置
下段には、お参りの際に使う基本的な仏具である「具足(ぐそく)」を置きます。
具足には「三具足」と「五具足」の2種類があります。
三具足(みつぐそく)
普段のお参りで用いる最も基本的な仏具のセットです。
香炉(こうろ)
中央に置き、お線香を立てます。
燭台(しょくだい)/ 火立(ひたて)
向かって右に置き、ろうそくを立てます。
花立(はなたて)
向かって左に置き、お花を飾ります。
五具足(ごぐそく)
法事やお盆、お正月など、特別な日に用いる正式な飾り方です。
香炉(こうろ)
中央に置きます。
燭台(しょくだい)/ 火立(ひたて)
一対(2つ)を香炉の両脇に置きます。
花立(はなたて)
一対(2つ)を燭台の外側に置きます。
その他の仏具の配置(高坏・過去帳・りん)
その他の仏具は、下段の空いているスペースに配置します。
高坏(たかつき)
お菓子や果物などをお供えするための器です。下段の左右に一対で置きます。
過去帳(かこちょう)
故人の戒名(法名)、俗名、命日などを記した帳面です。見台(けんだい)という台に乗せ、お参りの際に見やすい位置に置きます。
りん
読経の始まりや終わりに鳴らす仏具です。座布団の上に置き、りん棒と一緒に下段の右側など、手の届きやすい場所に置きます。
【宗派別】仏壇の飾り方の違い
仏壇の飾り方は、宗派の教えによってご本尊や脇侍、使用する仏具が異なります。
ここでは、代表的な宗派の飾り方の特徴を解説します。
ご自身の家の宗派が分からない場合は、親族に確認するか、お付き合いのあるお寺(菩提寺)に問い合わせてみましょう。
浄土真宗本願寺派の飾り方
ご本尊
阿弥陀如来(西立弥陀)
脇侍
向かって右に「親鸞聖人」、左に「蓮如上人」の掛軸
特徴
浄土真宗では、亡くなった方はすぐに極楽浄土で仏になると考えるため、原則として位牌は用いません。
代わりに「過去帳」や「法名軸」で故人を偲びます。また、お水やお茶はお供えしないため、茶湯器は使わず、仏飯器のみを供えます。
真宗大谷派の飾り方
ご本尊
阿弥陀如来(東立弥陀)
脇侍
向かって右に「十字名号」、左に「九字名号」の掛軸
特徴
本願寺派と同じく、位牌は用いません。 仏具の飾り方は本願寺派と似ていますが、「華瓶(けびょう)」という小さな花瓶に青い葉(樒など)を挿してお供えするのが特徴です。燭台は、亀の上に鶴が乗った「亀鶴の燭台」が使われることもあります。
浄土宗の飾り方
ご本尊
阿弥陀如来(舟立弥陀)
脇侍
向かって右に「善導大師」、左に「法然上人」の掛軸
特徴
基本的な仏具の配置は、これまで説明した通りです。ご本尊は、後ろに舟形の光背がついた立像である「舟立弥陀」が一般的です。
真言宗の飾り方
ご本尊
大日如来
脇侍
向かって右に「弘法大師」、左に「不動明王」の掛軸
特徴
ご本尊である大日如来を宇宙の中心と考えるため、ご本尊を最も重要視します。 仏飯器と茶湯器をそれぞれ2つずつ(ご本尊用とご先祖様用)お供えすることもあります。
曹洞宗・臨済宗の飾り方
ご本尊
釈迦牟尼仏(座像)
脇侍
宗派や各派によって異なります。
曹洞宗
向かって右に「承陽大師(道元)」、左に「常済大師(瑩山)」
臨済宗
向かって右に「達磨大師」、左に「観世音菩薩」など
特徴
禅宗であるため、比較的シンプルな飾り方をします。**毎日のお勤めを大切にする**のが特徴です。
日蓮宗の飾り方
ご本尊
大曼荼羅(掛軸)
脇侍
向かって右に「大黒天」、左に「鬼子母神」
特徴
中央に「大曼荼羅」の掛軸を祀り、その前に日蓮聖人の像を置くのが一般的です。お水やお茶は供えないことが多く、茶湯器は用いません。
仏壇の置き場所と向きのルール

仏壇を家に置く際、どこに、どの向きで置けば良いのか迷うかもしれません。
厳格な決まりはありませんが、古くからの考え方や適した環境があります。
仏壇を置くのに適した場所
最も大切なのは、家族が毎日自然に手を合わせられる場所であることです。
リビングや居間など、家族が集まる場所
静かで落ち着いてお参りできる場所
和室の床の間や仏間
現代の住宅事情に合わせて、お参りしやすい場所を選ぶのが良いでしょう。
避けるべき仏壇の設置場所
仏壇は木材や漆などで作られたデリケートなものです。
長持ちさせるためにも、以下の場所は避けましょう。
直射日光が当たる場所
変色やひび割れの原因になります。
エアコンの風が直接当たる場所
乾燥や急激な温度変化で木が傷みます。
湿気の多い場所
カビや歪みの原因になります。
神棚の真下や向かい合わせ
どちらか一方にお参りする際、もう一方にお尻を向けてしまうため失礼にあたるとされています。
宗派による仏壇の向きの考え方
仏壇の向きに絶対的な決まりはありませんが、伝統的に良いとされる向きが3つあります。
南方北面説(なんぽうほくめんせつ)
仏壇を南向きに設置します。位の高い人が南を向いて座ったことに由来し、最も一般的な向きです。
西方浄土説(さいほうじょうどせつ)
仏壇を東向きに設置し、西にあるとされる阿弥陀如来の極楽浄土に向かって拝む考え方です。浄土宗や浄土真宗などで重視されることがあります。
本山中心説(ほんざんちゅうしんせつ)
お参りした際に、自分の家の宗派の総本山がある方角を向くように設置する考え方です。
どの向きが良いか迷う場合は、お参りする人の気持ちを第一に、家の間取りに合わせて決めると良いでしょう。
和室と洋室での配置例
和室の場合
仏間があればそこに、なければ床の間や畳の上に直接、または低い台の上に置きます。座ってお参りすることを想定した高さにすると良いでしょう。
洋室の場合
リビングのサイドボードやチェストの上など、少し高さのある場所に置くのが一般的です。現代のライフスタイルに合わせて、インテリアに馴染むように配置しても問題ありません。
ミニ仏壇・モダン仏壇の飾り方

最近では、マンションなどにも置きやすいコンパクトなミニ仏壇や、洋室にも合うモダン仏壇が人気です。
基本的な飾り方のルールは同じですが、スペースに合わせた工夫が必要です。
省スペースでの仏具の配置方法
ミニ仏壇はスペースが限られているため、仏具の配置には工夫が必要です。
最優先はご本尊と位牌です。
まずはこれらを正しい位置に安置しましょう。
その上で、三具足(香炉・燭台・花立)やおりんなど、最低限必要な仏具を配置します。
仏具も仏壇のサイズに合わせたコンパクトなものを選ぶのがポイントです。
簡易的な飾り方のポイント
スペース上、すべての仏具を置けない場合もあるでしょう。
その場合は、お参りの都度、お盆などに乗せてお供えするという方法もあります。
例えば、仏飯器や茶湯器を置く場所がなければ、お参りするときだけ仏壇の前に小さな机を置き、その上にお供えします。
大切なのは、毎日心を込めてお参りすることです。
モダン仏壇に合う仏具の選び方
モダン仏壇の魅力は、現代のインテリアに調和するデザイン性の高さです。
仏具もそのデザインに合わせて選ぶことができます。
伝統的な真鍮製のものだけでなく、ガラス製や陶器製、木製など、様々な素材や色の仏具があります。
故人の好きだった色や、お部屋の雰囲気に合わせて、自由にコーディネートを楽しんでみるのも良い
でしょう。
お供え物の種類と正しい飾り方
仏壇へのお供えは、仏様やご先祖様への感謝の気持ちを表す大切な行いです。
お供えには「五供(ごくう)」と呼ばれる基本があります。
お供えの基本「五供」
五供とは、お供えの基本となる5つの要素です。
香
お線香の香り。場を清め、仏様や故人への食事という意味合いもあります。
花
仏花。仏様の慈悲の心を象'象徴し、お参りする人の心を和ませます。
灯燭(とうしょく)
ろうそくの灯り。仏様の智慧の光を表し、煩悩の闇を照らします。
浄水(じょうすい)
お茶やお水。お参りする人の心を清めるという意味があります。
飲食(おんじき)
ご飯(仏飯)や果物、お菓子など。収穫への感謝と、ご先祖様への感謝を表します。
ご飯(仏飯)とお茶・水の供え方
ご飯は、炊きたてのものを家族が食べる前に一番にお供えするのが理想です。
仏飯器に丸くきれいに盛ります。
お茶やお水も、毎朝新しいものに取り替えましょう。
お供えしたご飯やお茶は、お昼前には下げ、「お下がり」として家族でいただくのが作法です。
仏様からの力をいただくという意味があり、食べ物を無駄にしないという教えにも繋がります。
(※浄土真宗では、教えによりお水やお茶はお供えしません。)
お花の種類と飾り方
仏壇にお供えする花(仏花)は、左右の花立に一対で飾るのが基本です。
適した花
菊、カーネーション、トルコギキョウ、スターチスなど、長持ちする花が好まれます。
避けるべき花
トゲのある花(バラなど)、香りの強すぎる花(ユリなど)、毒のある花(彼岸花など)は避けるのが一般的です。
お菓子や果物の供え方と配置
お菓子や果物は、高坏(たかつき)に乗せるか、なければ半紙を敷いたお皿に乗せてお供えします。故人が好きだったものをお供えすると、より心のこもった供養になるでしょう。
配置場所は、下段の空いているスペースや、仏壇の前に置いた経机(きょうづくえ)の上などが適しています。
仏壇の飾り方に関するよくある質問
最後に、仏壇の飾り方について寄せられることの多い質問にお答えします。
法事・お盆・お彼岸の特別な飾り方は?

法事やお盆、お彼岸などの特別な日には、普段よりも丁寧な飾り付けをします。
五具足で飾る
普段は三具足でも、特別な日には燭台と花立を一対にした五具足で正式に飾ります。
打敷(うちしき)を掛ける
仏壇の内部を荘厳にするための三角形や四角形の布を掛けます。
特別なお供え物をする
お餅、お団子、そうめん、季節の果物や野菜などを豪華にお供えします。
盆提灯を飾る(お盆)
お盆には、ご先祖様の霊が迷わずに帰ってこられるように、目印として盆提灯を飾ります。
仏壇に故人の写真を飾っても良い?
正式な作法としては、仏壇の中に故人の写真を飾ることはしません。
仏壇の中はご本尊様を中心とした仏様の世界であり、写真は「俗世」のものと考えられるためです。
もし写真を飾りたい場合は、仏壇のすぐ近くの別の場所(サイドボードの上や壁など)に飾るのが望ましいとされています。
そうすることで、お参りの際に写真の故人にも語りかけることができます。
複数の位牌がある場合の並べ方
ご先祖様の位牌が複数ある場合は、向かって右側が上座になります。
一番古いご先祖様の位牌を一番右に置き、そこから左に向かって順番に並べていくのが一般的です。
スペースがなくて並べきれない場合は、命日に合わせて前面に出す位牌を入れ替えたり、「繰り出し位牌」や「過去帳」にまとめたりする方法もあります。
浄土真宗で位牌を置かない理由は?
「浄土真宗では位牌を置かないと聞いたけど、なぜ?」 という疑問は非常によく聞かれます。
これは、浄土真宗の「往生即成仏(おうじょうそくじょうぶつ)」という教えに基づいています。
この教えでは、亡くなった人は阿弥陀如来の力によって、亡くなるとすぐに極楽浄土へ往き、仏になると考えられています。
そのため、魂がこの世にとどまるための依り代である位牌は必要ないとされているのです。
代わりに、故人の名前(法名)を記した「法名軸(ほうみょうじく)」を仏壇内部の側面に掛けたり、「過去帳」に記したりして、故人を偲びます。
まとめ
仏壇の飾り方は、一見複雑に思えるかもしれませんが、一つひとつの仏具の意味や配置の理由を知ることで、より深く理解できます。
この記事の要点をまとめます。
仏壇の飾り方の基本は、最上段にご本尊、その下段に位牌、そして中段・下段にお供えや仏具を配置すること。
宗派によってご本尊や脇侍、使う仏具が異なるため、自分の家の宗派を確認することが最も重要。
置き場所や向きに厳格な決まりはないが、家族がお参りしやすく、仏壇が傷まない環境を選ぶのが良い。
ミニ仏壇やモダン仏壇でも、基本ルールを尊重しつつ、スペースやデザインに合わせて柔軟に飾ることができる。
お供えは「五供」を基本とし、感謝の気持ちを込めて行うことが大切。
仏壇の飾り方は、ご本尊様やご先祖様への敬意と感謝を表すための大切な作法です。
しかし、最も重要なのは形式にこだわりすぎることではなく、日々心を込めて手を合わせる気持ちです。
もし飾り方で分からないことや不安なことがあれば、お付き合いのあるお寺(菩提寺)や、ジョイフルエーケー 仏壇仏具専門店メモリアルギャラリーに相談してみることをお勧めします。
この記事が、あなたの家の仏壇と向き合う一助となれば幸いです。
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