仏壇のお供え物マナー|置き方・品物・タイミングの基本
- h-gyoten
- 9 分前
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「実家の仏壇を継いだけれど、お供えの作法がよく分からない…」
「もうすぐ法事なのに、何をお供えすれば失礼にならないか不安…」
故人やご先祖様を大切に想う気持ちから、仏壇に手を合わせる方は多いでしょう。
しかし、いざお供え物をしようとすると、品物選びや置き方、タイミングなど、分からないことだらけで戸惑ってしまいますよね。
この記事では、仏壇へのお供えに関する基本的なマナーを、初心者の方にも分かりやすく解説します。
この記事を読めば、お供え物の基本である「五供」から、具体的な品物の選び方、正しい置き方、下げるタイミングまで、一通りの知識が身につきます。
故人への感謝と供養の気持ちがしっかりと伝わるよう、正しい作法を一緒に学んでいきましょう。
仏壇のお供え物の基本「五供(ごく)」
仏壇へのお供えには「五供(ごく)」と呼ばれる5つの基本があります。
これは、仏様やご先祖様への感謝の気持ちを表すための大切な要素です。
まずはこの五供を理解することから始めましょう。
香(こう)
花(はな)
灯燭(とうしょく)
浄水(じょうすい)
飲食(おんじき)
これら5つを日々お供えすることが、丁寧なご供養につながります。

香(お線香)
お線香の香りは、人々の心を清め、仏様の食事になるとされています。
また、その香りは隅々まで行き渡ることから、仏様の慈悲が平等に広がることを象徴しているとも言われます。
お参りをする際には、まずお線香をあげて心を落ち着け、ご先祖様と向き合う時間を作りましょう。

花(仏花)
仏壇にお供えする花は、厳しい自然の中で美しく咲く姿から、仏様の修行の忍耐や慈悲を象徴しています。
美しい花をお供えすることで、お参りする人の心も穏やかになります。
季節の花を飾ることで、ご先祖様に季節の移ろいを伝えるという意味合いもあります。
枯らさないように、こまめに水を取り替えることが大切です。

灯燭(とうしょく)|ろうそくの灯り
ろうそくの灯りは、仏様の知恵の光を象徴し、私たちの煩悩や迷いの闇を照らすとされています。
お線香をつける際の火種としてだけでなく、灯りそのものが重要なお供え物です。
お参りが終わったら、火の安全のために必ず消すようにしましょう。
手で扇いで消すか、専用の仏具を使うのがマナーです。
息を吹きかけて消すのは不作法とされています。
浄水(じょうすい)|水やお茶
清らかな水やお茶は、お参りする人の心を洗い清めるという意味があります。
仏様やご先祖様の喉の渇きを潤すためのお供え物です。
毎朝、新しい水やお茶に交換しましょう。
湯呑みは、茶渋などがつかないように常に清潔に保つことが大切です。
飲食(おんじき)|ご飯や食べ物
「飲食(おんじき)」とは、私たちが普段食べているご飯や、その他のお菓子・果物などのお供え物全般を指します。
ご先祖様への感謝の気持ちを表し、同じものを分かち合うという意味が込められています。
特に炊きたてのご飯は「仏飯(ぶっぱん)」と呼ばれ、湯気そのものがご馳走になると考えられています。
お供えに適した品物と選び方
五供の中でも特に悩むのが「飲食(おんじき)」、つまり食べ物のお供えではないでしょうか。
ここでは、お供えに適した具体的な品物と選び方のポイントをご紹介します。
定番のお菓子|和菓子・洋菓子

お菓子は日持ちがしやすく、種類も豊富なため、お供え物の定番です。
故人が好きだったお菓子を選ぶと、より心のこもったご供養になるでしょう。
和菓子
お団子、お饅頭、どら焼き、羊羹、せんべいなど。季節感のある上生菓子も喜ばれます。
洋菓子
クッキー、マドレーヌ、バームクーヘン、カステラなど。クリームを使った生菓子は傷みやすいため、避けた方が無難です。
個包装になっているお菓子は、後で親族に分けやすく、衛生的でもあるためおすすめです。
季節の果物
果物も、お供え物の定番です。
季節の旬の果物をお供えすることで、ご先祖様に季節の移ろいをお伝えすることができます。
春
いちご、びわ
夏
メロン、スイカ、桃、ぶどう
秋
梨、柿、りんご
冬
みかん、りんご
丸い形の果物は「円=縁」につながるとされ、縁起が良いと言われています。
毎日のご飯(仏飯)とお水・お茶
毎日の食事の際に、炊きたてのご飯をお供えするのが最も丁寧な作法です。
これを「仏飯(ぶっぱん)」と呼びます。
朝一番に炊いたご飯を、家族が食べる前にまず仏壇にお供えしましょう。
お水やお茶も、毎朝新しいものに交換します。
水道水で問題ありませんが、気になる方は一度沸かした白湯(さゆ)をお供えしても良いでしょう。
故人が好きだった食べ物・飲み物
ご供養で最も大切なのは、故人を想う気持ちです。
生前、故人が大好きだった食べ物や飲み物をお供えするのも、大変喜ばれるご供養の一つです。
例えば、お寿司が好きだった方にはお寿司を、コーヒーが好きだった方には淹れたてのコーヒーをお供えしても良いでしょう。
ただし、傷みやすいものや匂いの強いものは、お供えする時間を短くするなどの配慮が必要です。
お盆や法事など行事ごとのお供え物
お盆や法事など、親族が集まる特別な日には、普段より少し豪華なお供え物を用意するのが一般的です。
お盆
そうめん、団子、季節の野菜や果物、故人の好物など。精霊馬(きゅうりやナスで作る馬や牛)を飾る地域もあります。
法事・法要
日持ちのする個包装のお菓子や果物の詰め合わせ、缶詰などが定番です。参列者が分け合って持ち帰れるように配慮すると良いでしょう。
避けるべきお供え物とタブー
ご先祖様への感謝を伝えるお供え物ですが、中には避けるべきとされる品物や、やってはいけないマナーも存在します。
失礼にあたらないよう、基本的なタブーを覚えておきましょう。
肉や魚などの「四つ足生臭もの」
仏教では、殺生を連想させるものは避けるべきとされています。
そのため、肉や魚などの「四つ足生臭(よつあしなまぐさ)」と呼ばれるものは、お供えには不向きです。
ただし、故人が生前大好きだった場合など、特別にお供えしたい場合は、宗派やお寺の考え方を確認してみると良いでしょう。
お供えする場合も、短時間で下げるようにしましょう。
匂いの強い食べ物(ニンニク・ニラ)
ニンニク、ニラ、ネギなど香りの強い食べ物は「五辛(ごしん)」と呼ばれ、仏教の修行の妨げになるとされています。
そのため、これらを使った料理をお供えするのは避けるのが一般的です。
同様に、ドリアンなど匂いの強い果物も避けた方が無難です。
仏壇に供えてはいけない花の種類
お花は大切なお供え物ですが、中には仏壇に供えるのにふさわしくないとされる種類があります。
トゲのある花
バラ、アザミなど。トゲが殺生を連想させるためです。
毒のある花
彼岸花、水仙、すずらんなど。仏様に毒をお供えすることになるためです。
香りが強すぎる花
ユリなど。香りが強すぎると、お線香の香りを妨げると言われます。ただし、故人が好きだった場合はお供えすることもあります。
つる性の花
朝顔など。つるが絡みつく様子が成仏の妨げになると考えられることがあります。
仏壇に関するやってはいけないこと
お供え物以外にも、仏壇を扱う上で注意すべき点があります。
お供え物を直接置かない
必ず高坏(たかつき)や供物台(くもつだい)などの仏具に乗せてお供えします。
ろうそくの火を息で消さない
人の口は不浄なものと考えられているため、手で扇ぐか仏具を使って消しましょう。
お供え物を長期間放置しない
食べ物が傷んだり、花が枯れたりするまで放置するのは失礼にあたります。
仏壇の上を物置にしない
仏壇はご本尊様やご先祖様が祀られている神聖な場所です。上には何も置かないようにしましょう。
お供え物の正しい置き方・配置・向き
お供え物は、ただ置けば良いというわけではありません。
基本的な配置や向きのルールを知っておくと、より丁寧な印象になります。
基本の配置|図解で見る仏具と供物
仏壇の内部は、ご本尊様を中心に、様々な仏具が配置されます。お供え物の基本的な配置は以下の通りです。

1. 中央最上段
ご本尊様
2. ご本尊様の左右
脇侍(わきじ)やご先祖様の位牌
3. 中段
中央に仏飯器(ご飯)と茶湯器(お茶・水)を置きます。
4. 中段の左右
高坏(たかつき)を置き、お菓子や果物を盛ります。
5. 下段
中央に香炉(お線香)、その左右に燭台(ろうそく)と花立(お花)を配置します。
※上記は一例です。仏壇の大きさや宗派によって配置は異なります。
お供え物の向き|仏様側か自分側か
「お供え物の正面は、仏様(ご本尊様)側に向けるべきか、それともお参りする自分側に向けるべきか?」という疑問を持つ方は多いです。
これには諸説ありますが、一般的にはお供えする際は、まず自分たちがお供え物をいただくという意味で、正面を自分側に向けて置き、お参りが終わったら仏様に召し上がっていただくという意味で、正面を仏様側に向き直すのが丁寧な作法とされています。
ただし、常に仏様側に向けておくのが正しいとする考え方もあります。
大切なのは、心を込めてお供えすることですので、ご自身のやりやすい方法で構いません。
お菓子や果物の置き方・飾り方
お菓子や果物は、高坏(たかつき)や供物台(くもつだい)といった専用の仏具に乗せてお供えします。
高坏(たかつき)への盛り方
高坏は、脚付きのお皿のような形の仏具です。
一対で使うのが基本で、仏壇の中段の左右に置きます。
お菓子
半紙や懐紙を敷いた上に、個包装のお菓子なら2〜3個、お饅頭なら1個などを乗せます。
果物
りんごや梨など大きめのものは1つ、みかんや柿などは3つなど奇数個を盛るのが一般的です。果物を盛る際は、ひし形になるように置くと美しく見えます。
供物台(くもつだい)の使い方
供物台は、高坏よりも広く、たくさんの品物を一度にお供えできる台です。法事などでたくさんのお供え物が集まった際に使用します。
置き方
仏壇の前に置いた経机(きょうづくえ)の上や、仏壇の横に置きます。
盛り方
こちらも半紙などを敷き、その上にお菓子や果物をバランス良く配置します。頂いたお供え物は、包装紙を外して中身が見えるようにお供えするのがマナーです。
お供えのタイミング|いつ供え、いつ下げるか
お供え物は、いつお供えして、いつ下げれば良いのでしょうか。
毎日のことだからこそ、タイミングに迷いますよね。
基本的なルールを解説します。
毎日のお供え|朝供えて夕方下げる
毎日のお供えは、朝に行うのが基本です。
家族が朝食をとる前に、炊きたてのご飯やお茶・お水をお供えし、一日の始まりにご挨拶をしましょう。
そして、お供え物は夕方には下げるのが一般的です。
長時間置いたままにすると、特に夏場は食べ物が傷んでしまい、かえって失礼にあたります。
お供えをいつ下げるかの判断基準
下げるタイミングに厳密な決まりはありませんが、「お下がりを美味しくいただけるうち」がひとつの目安です。
ご飯や傷みやすい食べ物
数時間程度で下げましょう。硬くなったり、傷んだりする前に下げます。
お菓子や果物
日持ちするものであれば、1日〜数日お供えしても構いません。ただし、ホコリがかぶらないように注意し、傷む前に下げましょう。
お供え物は、ご先祖様が召し上がった後のお下がりを、私たちがいただくことでご利益を得ると考えられています。
感謝していただくためにも、傷む前に下げることが大切です。
お盆のお供えはいつからいつまでか
お盆は、ご先祖様の霊が家に帰ってくるとされる特別な期間です。お供えも普段より丁寧に行います。
お供えを始める日
一般的に、お盆の入りである8月13日(または7月13日)の朝からお供えを始めます。
お供えを終える日
お盆の明けである8月16日(または7月16日)までお供えを続けます。ご先祖様をお送りした後に下げます。
この期間中は、食事のたびにご飯をお供えしたり、そうめんや団子などお盆ならではの品をお供えしたりします。
法事・法要でのお供えの期間
法事・法要の際のお供え物は、当日の法要が始まる前にお供えし、法要が終わって会食などが済んだ後、参列者が帰る際に「お下がり」として分けるのが一般的です。
そのため、お供えの期間は基本的に法事当日のみとなります。
仏壇のお供えに関するQ&A
最後に、仏壇のお供えに関してよく寄せられる質問にお答えします。
下げたお供え物は食べても良い?
はい、ぜひ感謝していただいてください。
仏壇から下げたお供え物は「お下がり」と呼ばれ、仏様やご先祖様からのお下がりものとして、いただくことでご利益があるとされています。
ご家族で分け合って食べることで、ご先祖様とのつながりを感じることができます。
食べ物を無駄にしないという意味でも、大切なことです。
お酒やビールを供えても良い?
故人が生前お酒好きだった場合は、お供えしても問題ありません。
お猪口などに入れてお供えしましょう。
ただし、仏教の教えではお酒は基本的に避けるべきものとされているため、お供えする時間は短くし、お参りが終わったらすぐに下げるのが良いでしょう。
宗派やご家庭の考え方にもよるので、心配な場合は菩提寺の住職などに確認することをおすすめします。
他家へ訪問する際の手土産マナー
法事などで他家を訪問し、仏壇にお参りする際は手土産(お供え物)を持参するのがマナーです。
品物
日持ちのする個包装のお菓子、果物、お線香などが定番です。金額の相場は3,000円~5,000円程度が一般的です。
渡し方
施主の方に「御仏前にお供えください」と言って手渡します。自分で勝手に仏壇にお供えするのはマナー違反です。
お供え物の「のし」の書き方と選び方
手土産としてお供え物を持参する際は、のし(掛け紙)をかけるのが丁寧です。
水引
黒白または双銀の結び切りの水引を選びます。関西など一部地域では黄白の水引を使うこともあります。
表書き
四十九日を過ぎている場合は「御供」または「御仏前」と書くのが一般的です。四十九日より前は「御霊前」と書きます。
名前
水引の下に、自分の氏名をフルネームで書きます。
まとめ
仏壇へのお供えは、故人やご先祖様への感謝と供養の気持ちを形にする大切な習慣です。
最初は難しく感じるかもしれませんが、基本さえ押さえれば決して怖いものではありません。
基本は「五供」
香・花・灯燭・浄水・飲食の5つを意識する。
品物選び
お菓子や果物が定番。故人の好物も喜ばれるが、肉・魚や匂いの強いものは避ける。
置き方
仏具を使い、ご本尊様への敬意を払って配置する。
タイミング
毎朝お供えし、傷む前に下げて感謝していただく。
何よりも大切なのは、ご先祖様を想うあなたの気持ちです。
この記事を参考に、心を込めて日々のお参りを続けてみてください。
きっとその想いは、ご先祖様に届くはずです。
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