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仏壇の線香|正しいあげ方・本数・マナーを初心者向けに解説

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「故人をしっかり供養したい」という想いで仏壇を家に迎えたものの、毎日のお世話、特に基本的なお線香のあげ方が分からず、不安に感じていませんか?


「自己流でやって、ご先祖様に失礼になったらどうしよう…」

「線香は何本あげるのが正解なの?」


初めて仏壇を置かれた方が、このような疑問や不安を抱くのは当然のことです。


この記事では、そんな初心者の方に向けて、自宅の仏壇でのお線香の正しいあげ方から、宗派による本数の違い、知っておきたいマナーまで、一から分かりやすく解説します。


この記事を読めば、お線香に関する作法の基本がすべて分かり、自信を持って毎日のご供養ができるようになります。ぜひ最後までお読みいただき、故人を思う大切な時間を、心安らかにお過ごしください。

自宅の仏壇でのお線香のあげ方・手順


お線香をあげる一連の流れは、故人やご先祖様への敬意を表す大切な儀式です。難しく考える必要はありませんが、

基本的な手順を知っておくことで、より心を込めて供養ができます。


ここでは、一般的なお線香のあげ方を6つのステップに分けて解説します。


手順1:仏壇の前に座り一礼する


まず、仏壇の前に正座し、ご本尊様、そして故人やご先祖様へ向かって深く一礼します。これから供養を始めるという、気持ちを整えるための大切な挨拶です。


手順2:ロウソクに火を灯す


次に、マッチやライターを使って、燭台(しょくだい)に立てたロウソクに火を灯します。


お線香に直接ライターなどで火をつけるのはマナー違反とされることがあります。

仏様の智慧の光を象徴するロウソクの火から、お線香へ火をいただくのが丁寧な作法です。


手順3:線香に火をつけ手であおぎ消す


ロウソクの炎に線香の先を近づけて火をつけます。火がついたら、線香を軽く振り、燃え上がった炎を消します。


このとき、絶対に口から息を吹きかけて消さないでください

仏教では、人間の口は穢れ(けがれ)や煩悩の元とされ、仏様にお供えする神聖な火を汚す行為と考えられています。

必ず、線香を持っている手と反対の手で、そっとあおいで消しましょう。


手順4:香炉に線香を立てる(または寝かせる)


火のついた線香を、香炉(こうろ)に立てるか、寝かせます。


この作法は宗派によって異なります。

立てる宗派と寝かせる宗派があり、本数も様々です。

ご自身の家の宗派の作法が分からない場合は、後の「線香の本数と立て方・寝かせ方の作法」の章で詳しく解説しますので、そちらを参考にしてください。


手順5:おりんを鳴らして合掌礼拝する


線香を供えたら、おりんをりん棒で軽く打ち、鳴らします。おりんの澄んだ音色は、人々の邪念を払い、祈りを仏様や故人のもとへ届ける役割があるとされています。


おりんを鳴らす回数は宗派によって異なりますが、一般的には2回鳴らすことが多いです。

その後、数珠を手にかけ、胸の前で静かに合掌し、目を閉じて故人への感謝や冥福を祈ります。


手順6:ロウソクの火を消して再度一礼する


お祈りが終わったら、ロウソクの火を消します。

この時も、息を吹きかけて消すのは避け、手であおぐか、専用の火消しを使いましょう。


最後に、仏壇に向かって再び深く一礼し、お参りを終えます。


線香の本数と立て方・寝かせ方の作法


お線香のあげ方で最も迷うのが、本数と「立てる」か「寝かせる」かという作法ではないでしょうか。これはご家庭の宗派によって正式な作法が異なります。


ここでは、主要な宗派ごとの作法を解説します。


線香を「立てる」宗派と本数


多くの宗派では、線香を香炉の灰にまっすぐ立てるのが一般的です。


1本立てる宗派:曹洞宗・臨済宗


禅宗である曹洞宗や臨済宗では、1本の線香を香炉の中央に立てます。

これは、何にもとらわれず、一心に仏様と向き合うという教えを表しているとされています。


3本立てる宗派:天台宗・真言宗


天台宗や真言宗では、3本の線香を立てるのが基本です。

これは「仏・法・僧」の三宝(さんぼう)を敬う気持ちを表しています。

立て方は、自分から見て手前に1本、奥に2本が逆三角形になるように立てるのが一般的です。


線香を「寝かせる」宗派と本数


浄土真宗など、一部の宗派では線香を立てずに香炉に寝かせます。


1本を折って寝かせる宗派:浄土真宗


浄土真宗では、線香を立てることはしません

これは、亡くなった方は阿弥陀如来の力によってすぐに極楽浄土へ往生するという教えに基づいています。

そのため、他の宗派のように「煙があの世への道しるべになる」と考える必要がないためです。


作法としては、1本の線香を2つか3つに折り、火をつけた側を左にして、香炉の中に寝かせます。


2〜3本寝かせる宗派:浄土宗


浄土宗は、基本的には立てることが多いですが、地域や寺院によっては2〜3本を寝かせる場合もあります。


自分の家の宗派が分からない場合の対応


「自分の家の宗派が分からない…」という方も少なくないでしょう。その場合の対処法は以下の通りです。


  • 菩提寺(ぼだいじ)に確認する

    ご先祖様のお墓があるお寺(菩提寺)に問い合わせるのが最も確実な方法です。

  • 親戚に聞く

    ご両親や年長の親戚に確認してみましょう。

  • 仏壇・仏具店に相談する

    仏壇を購入したお店に相談するのも一つの手です。


どうしても宗派が分からない場合は、どの宗派でも比較的受け入れられやすい1本立てで供養するのが無難とされています。

しかし、一番大切なのは故人を敬う気持ちですので、あまり神経質になりすぎる必要はありません。


線香をあげる意味と必要な道具


そもそも、なぜ仏壇にお線香をあげるのでしょうか。

その意味と、日々の供養に最低限必要な道具について解説します。


お線香をあげる3つの意味


お線香をあげる行為には、主に3つの大切な意味が込められています。


  • 仏様の食事(香食 こうじき)

    仏様や故人は、食べ物の代わりに「香り」を召し上がると考えられています。これを香食といい、良い香りの線香を供えることは、最上のおもてなしとされています。

  • 心身の浄化

    お線香の香りは、お参りする人の心身の穢れを清め、心を落ち着かせる効果があるとされています。仏様と向き合う前に、自分自身を清浄な状態にするという意味合いがあります。

  • 故人との対話の架け橋

    天に立ち上るお線香の煙は、私たちの祈りや想いを仏様や故人のもとへ届けてくれる架け橋になると信じられています。


供養に必要な道具一式


毎日のお線香をあげる際に、最低限揃えておきたい道具は以下の通りです。





  • 線香

    様々な香りや長さ、煙の量のものがあります。

  • 香炉(こうろ)

    線香を立てたり寝かせたりするための器です。

  • 香炉灰(こうろばい)

    香炉の中に入れて、線香を支えるための灰です。

  • ロウソク

    線香に火を移すためのものです。

  • 燭台(しょくだい)

    ロウソクを立てるための台です。

  • マッチやライター

    ロウソクに火をつけるために使います。

  • おりん

    合掌の前後に鳴らす仏具です。

  • りん棒

    おりんを鳴らすための棒です。


お線香をあげる頻度とタイミング


「お線香はいつ、どのくらいの頻度であげればいいの?」というのも、よくある疑問です。


基本は朝と晩の一日二回


お線香をあげる頻度に、厳格な決まりはありません

しかし、一般的には朝と晩の一日二回が基本とされています。


  • :一日の始まりに、ご先祖様への挨拶として。食事の前が望ましいとされます。

  • :一日の終わりに、無事に過ごせたことへの感謝を込めて。就寝前などが良いでしょう。


このように、生活のリズムに合わせて習慣にすると、無理なく続けやすくなります。


命日・月命日・お盆・お彼岸


故人の命日や、毎月の命日である月命日、そしてお盆やお彼岸といった特別な日には、普段以上に心を込めて供養したいものです。


いつもより少し良いお線香や、故人が好きだった香りのものをお供えするのも、素晴らしい供養になります。


毎日あげられない場合の考え方


仕事や家庭の事情で、毎日お線香をあげることが難しい場合もあるでしょう。

そのことで罪悪感を抱く必要はまったくありません。


供養において最も大切なのは、故人を想い、感謝する気持ちです。


毎日できなくても、週末だけ、朝だけ、あるいは時間のある時だけでも構いません。

無理のない範囲で、自分のできる形で供養を続けることが何よりも重要です。


【時期別】49日・お盆・法要の作法

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普段のお参りに加え、特定の時期には特別な作法や考え方があります。

ここでは代表的なものを解説します。


四十九日までは線香を絶やさない?


「四十九日法要が終わるまでは、線香の煙を絶やしてはいけない」という話を聞いたことがあるかもしれません。


これは、故人の魂が亡くなってから四十九日間、この世とあの世の間を旅しており、その間の食事であり道しるべとなるのが線香の香りや煙だ、という考え方に基づいています。


しかし、現代の住宅事情で24時間火を灯し続けるのは、火事の危険性が非常に高く現実的ではありません。

安全を最優先し、長時間燃焼する渦巻き型の線香を利用したり、在宅している間だけ灯したりするなど、無理のない範囲で実践しましょう。

故人も、残された家族が危険な目に遭うことは望んでいないはずです。


お盆の迎え火・送り火

お盆には、ご先祖様の霊が家に帰ってくるとされています。

その際、霊が迷わず家にたどり着けるように焚くのが「迎え火」、お盆の終わりにあの世へお送りするために焚くのが「送り火」です。


伝統的には、焙烙(ほうろく)という素焼きのお皿の上で「おがら」という麻の茎を燃やしますが、マンションなどでは難しい場合も多いでしょう。

その際は、仏壇で普段より多めにお線香を焚いたり、盆提灯を灯したりすることで代わりとすることができます。


一周忌などの年忌法要


一周忌や三回忌といった年忌法要では、僧侶を招いて読経してもらうことが一般的です。

その際、参列者が順番にお線香をあげる「焼香」が行われます。


自宅での法要であっても、基本的な作法は普段のお参りと変わりません。

いつも以上に心を込めて、丁寧に行いましょう。


他家へお参りに行く際のマナー


知人や友人の家へ弔問に訪れ、仏壇にお参りさせてもらう機会もあるでしょう。

その際は、以下のマナーを心掛けてください。


  • 必ず許可を得る

    家に上がったら、まず「お線香をあげさせていただいてもよろしいでしょうか?」とご家族に一声かけましょう。

  • 作法は訪問先に合わせる

    線香の本数やあげ方は、その家の宗派に合わせるのが基本です。もし分からなければ、ご家族に尋ねるか、ご家族がやるのを見てから行うと良いでしょう。

  • 線香は持参しても良い

    「御仏前」の表書きをした袋に線香を入れて持参するのは丁寧な行為ですが、基本的には訪問先で用意されている線香を使わせていただくのが一般的です。


仏壇の線香に関するよくある質問


最後に、お線香に関して初心者の方が抱きがちな疑問にお答えします。


Q. 線香の火は途中で消してもいいですか?


A. はい、安全のためであれば途中で消しても全く問題ありません。


特に就寝前や外出前など、その場を離れる際は必ず火が完全に消えたことを確認してください。

火を消す際は、息を吹きかけるのではなく、手であおぐか、燃え残りの部分を香炉灰に軽く押し付けるようにして消しましょう。


Q. 線香をあげてはいけない場合はありますか?


A. 基本的に「あげてはいけない」という決まりはありません。


ただし、前述の通り、浄土真宗では他の宗派とはお線香をあげる意味合いが少し異なります。

また、最も重要なのは火の元の安全管理です。

留守中や、火のそばにいられない状況では、安全を優先して火をつけないという判断が大切です。


Q. 香炉灰の掃除や交換のタイミングは?


A. 線香の燃え残りが溜まり、灰が固くなってきたら掃除のタイミングです。


灰が固まると線香が立てにくくなったり、倒れやすくなったりします。

専用の灰ならしや網目の細かいふるいを使って、燃えカスだけを取り除きましょう。

灰が減ったり、湿気で汚れたりした場合は、新しい香炉灰と交換してください。

交換の目安は、半年に1回から1年に1回程度です。


Q. 煙や匂いが少ない線香はありますか?


A. はい、たくさんあります。


最近の住宅事情やライフスタイルの変化に合わせて、煙の量を大幅に抑えた「微煙(びえん)タイプ」や、香りをほとんどつけない「無香料タイプ」のお線香が数多く販売されています。

煙や香りが気になる方、アレルギーがある方でも安心してお使いいただけますので、探してみてください。


まとめ


この記事では、仏壇にお供えするお線香の正しいあげ方やマナーについて、初心者の方にも分かりやすく解説しました。


最後に、大切なポイントを振り返りましょう。


  • お線香をあげる手順は、心を込めて丁寧に行うことが何よりも大切です。

  • 線香の本数や立て方・寝かせ方は宗派によって異なります。事前に菩提寺や親戚に確認しておくと安心です。

  • 毎日お参りできなくても、自分のできる範囲で続けることが重要です。故人を想う気持ちが一番の供養になります。

  • 火の元の管理を徹底し、安全を第一に考えましょう。


お線香をあげる時間は、忙しい日常の中で故人と心静かに対話できる貴重なひとときです。

作法はあくまで、その気持ちを形にするためのものです。

あまり難しく考えすぎず、今日からあなたらしい形で、故人への感謝を伝えてみてはいかがでしょうか。


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